ラーメン

 →中華そば インスタントラーメン

 〔拉麺〕 中国の麺(メン)は小麦粉に塩、卵、かん水、水を加えてよくこねてつくるが、これを手だけで引っ張り、細く数多くの糸状に引き伸ばしてつくったものを拉麺(ラ-ミエン)という。拉(ラ-)は引っ張るの意で、麺をつくる職人のなかでも、これは特殊技術として珍重されている。拉麺に対して麺杖(ミエンチヤン)(麺棒)で薄く伸ばして畳み、包丁で細く切ったものを切麺(チエミエン)という。これらの麺を用いて、湯麺(タンミエン)、涼麺(リヤンミエン)、炒麺(チヤオミエン)など各種の中華そばがつくられる。中華そば

  日本では、これらの麺に主としてしょうゆ味のスープを用いたものをラーメンあるいは中華そばと称している。関東大震災(1923)後大いに流行したもので、当時は支那そばとよばれていた。海苔(ノリ)、鳴門巻(ナルトマキ)、ホウレンソウなどの具(グ)を加えて日本風に仕立ててある。近年は、塩味、みそ味のラーメンも好まれる。なお、インスタントラーメンは、1958年(昭和33)の発売以来またたくまに大衆的な人気を得るに至った。インスタントラーメン〈野村万千代〉

中華そば チュウカソバ

 中国料理のなかで軽食に属する点心(テンシン)の一つ。中国大陸はムギの栽培に古い歴史をもち、華北では麦類を主食とし、しかも粉にして加工して食べたという。後漢(ゴカン)の劉き撰『釈名(シヤクミヨウ)』のなかには「蒸餅(チヨンピン)も餅で、溲麺(ソウミエン)もまた同じ」と記してあり、この溲麺は水と小麦粉を混ぜて発酵させたものといい、漢時代にこれを食べたという。当時の麺(ミエン)は現今のものと多少異なるとも思うが、そうめんやうどん類の代表とみられる麺類は、東アジアがつくりあげた特徴的な食べ物で、日本のそうめんも中国の溲麺からきたのではないかと思われる。

  中華そばは、日本人の味覚にもあい、庶民的な食品としてさまざまな形で民衆の生活に溶け込んでいる。麺の上にのせる具やかけ汁、調理法によって種々の名称があり、現在はインスタント食品として広範な地域に普及し市販されている。中華そばといっても、日本のそばのようにそば粉が原料ではなく小麦粉を使う。口当りがうどんと違うのは、かん水を加えて麺をつくるので、かん水のアルカリ性により麺質が収縮強靱(キヨウジン)になり、特殊な風味になるからである。このとき小麦粉のフラボン色素がアルカリの影響を受けて、麺が多少黄色を帯びる。

 〔麺の製法と種類〕小麦粉に温湯を加えてよくこね、麺棒で伸ばして手打ちにする切麺(チエミエン)と、麺棒を用いずに両手に持って細く引き伸ばしてつくる拉麺(ラ-ミエン)がある。拉麺づくりは特殊技能とされている。これらの麺は、ゆでる場合と蒸す場合があり、蒸して1人分ずつ玉にしておいたものは、夏でも2、3日保存できる。生麺のゆで方は、熱湯の中に麺をほぐし入れ、沸騰してきたら冷水を入れ、3回ぐらいこれを繰り返して冷水にとり、ただちに水切りする。麺の芯(シン)まで柔らかくしたものは、ゆですぎである。(1)湯麺(タンミエン) 熱湯で熱くした麺に焼き豚、ネギ、青菜などをのせて、スープをかけたもの。ラーメンは湯麺の1種で、しょうゆ味の汁を用い、焼き豚、干したけのこ、ネギなどを散らしたもの。叉焼麺(チヤ-シヤオミエン)は同様であるが、焼き豚をたっぷり入れたものである。(2)伊府麺(イ-フ-ミエン) 伊という富豪の家の麺が美味であったことに由来する。水を用いず卵で小麦粉をこねた高級麺を使い、多くは湯麺にする。(3)涼麺(リヤンミエン) 冷水で洗い、水を切って十分冷やした麺。豚肉、キュウリ、卵、エビなど好みの具をのせ、冷たいスープを少量かけ、酢、ラーユーなどを添えて出す夏向きの麺。(4)炒醤麺(チヤオチヤンミエン) 1人分ずつ皿に盛った麺に、種々の具をのせ、炒醤、(豚ひき肉、みじん切りのネギ、ショウガをいっしょに炒(イタ)め、酒、みそと少量のスープでどろりとさせたもの)をのせて、箸(ハシ)で混ぜながら食べる。(5)什景炒麺(シ-チンチヤオミエン) 蒸した麺を熱湯でもどし、水を切って、静かに麺の表面に焦げ目がつくくらい焼く。上に五目炒菜(チヤオツアイ)(豚肉、シイタケ、タケノコ、金糸卵、ネギなどを炒め、とろみをつける)をかけ、酢を添えて供する。〈野村万千代〉

インスタントラーメン

 日本で、第二次世界大戦後発明された加工麺(メン)製品の一種で、即席麺ともいう。原料は小麦粉が主体で、これにスープや、野菜、肉類などの副材が添付、あるいは混合されている。添付品も、ほとんどが乾燥品で、一部、ペースト状、油や、レトルト食品が添えられていることもある。製造には、まず中華麺をつくり、これを蒸して、麺のデンプンをα(アルフア)化し、その後乾燥する。また、麺は、細かく波状に加工し、包装しやすい形に成形する。一部に蒸さずに乾燥する棒状の麺もある。乾燥法は大別して、油で揚げるものと、熱風乾燥がある。前者は油揚げ麺、後者はα麺とよばれている。また、麺にスープの味をしみ込ませてから乾燥するものと、スープを別添えするものがある。初期は、味をしみ込ませたものが多かったが、現在では、多くがスープ別添え形となった。このほうが風味のよいものができるためである。形状は、麺を煮てスープを加えるものと、湯を注ぐだけでラーメンになるものとがある。後者はカップラーメン形が主である。麺は通常、湯に入れて3分ほど煮たあと、火を止め、スープを加えてつくりあげるものが主流である。インスタントラーメンの技術を利用した応用製品として、うどん、焼きそば、スパゲッティなどもつくられている。

  インスタントラーメンは、栄養的にみるとエネルギーは高いが、一方、野菜、肉類などは量が少なく、できあがった麺に、野菜や肉、卵などを加えて補うか、あるいは、副菜にそのようなものを添えることが望ましい。また食塩が多く、この点も注意する必要があるが、食塩はスープに多いので、スープの量を加減するなどして気をつける。インスタントラーメンのうち油揚げ麺は、保存中の味の変化が少ない反面、油の酸化が大きな問題となる。したがって、賞味期間も6か月と限り、それ以上期間のたったものは販売されないよう指導されている。しかし、直射日光に当たったり、極端に高温多湿の場所に置かれたりすると、賞味期間内でも変質することがあるから、保管には十分注意が必要である。〈河野友美〉


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