そ ば

 現在の主産国はソ連で、ポーランド、カナダ、日本もおもな生産国である。国内では北海道が全国の半分を生産し、鹿児島、茨城、青森の諸県も産地である。

  そばや菓子などとしての利用以外に、普通の脱穀では実が砕けるので、一度水に浸し、蒸熱してから乾燥、脱穀するパーボイル的な方法でそば米(マイ)にし、煮食あるいは米と混炊して食べる。またアルコール原料としてそば焼酎(シヨウチユウ)がつくられる。ソバを蜜源植物とした蜂蜜(ハチミツ)は、暗褐色で特有の風味がある。幼植物は野菜としても食べ、茎葉は緑肥や青刈り飼料とされる。そば殻(ガラ)は、枕(マクラ)の詰め物として親しまれている。ドイツではビール醸造のほか蒸留酒の原料とされるが、ヨーロッパやアメリカでは主として乳牛、ブタの飼料とされる。〈星川 清親〉

 〔起源と伝播〕栽培ソバの起源地は、東アジア北部、バイカル湖付近から中国東北部に至る地域とされてきたが、近年、多くの研究から、カシミール、ネパールを中心とするヒマラヤ地方、中国南部の雲南地域からタイの山地にかけて東西に細長く分布する野生ソバが発見された。この野生種には2倍種と4倍種の二型が分布しているが、栽培ソバはすべて2倍種であること、また野生2倍種の分布は野生ソバの分布地域のうち、雲南地域に限られていることから、栽培ソバの起源地は雲南地域であることが確実となった。この野生ソバは宿根性の多年生である以外は栽培ソバと酷似している。

  栽培ソバには2種あって、日本、ソ連、中国、ヨーロッパ、アメリカ、カナダ、南アメリカ、アフリカなど世界に広く栽培されている普通ソバF. esculentum Moenchと、ソ連、中国、ヒマラヤ地域で一部栽培されているダッタンソバF. tataricum Gaertnがある。ダッタンソバは普通ソバに比し苦味が強いのでニガソバともいい、食用以外にも飼料として利用される。中世のころ韃靼(ダツタン)人によってヨーロッパに導入されたため、この名がついた。これらの2種の栽培ソバは前記の野生種から起源されたもので、同一祖先野生種から分化した。

  中国南部の雲南地域で野生種から栽培種が成立したことから、中国における栽培はかなり古いとみられるが、史料としては7〜9世紀に初めてその記録がみられる。また日本へは中国から朝鮮半島を経て伝えられた。もっとも古い記録として『続日本紀(シヨクニホンギ)』に、養老(ヨウロウ)6年(722)に干魃(カンバツ)が起き、将来に備えてソバ栽培を奨励したとある。ヨーロッパの記録は14世紀にドイツでみいだされ、17世紀にはヨーロッパ各地に伝播(デンパ)している。アメリカには1625年以前にオランダ植民によって導入され、続いてカナダに伝播した。〈田中 正武〉


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